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大人も読まなきゃもったいない!モンゴメリの名作「赤毛のアン」シリーズにはロマンスがいっぱい

2020年の春、新型コロナの流行で世界が、日常が、大きく変わってしまいました。
そんなときも、ロマンスを片手に過ごしています。

よいロマンスは、癒し。

今こそ、あれを読まなくっちゃ!と本棚をあさって、久しぶりに引っ張り出してきたのが「アンの娘 リラ」


アンの娘リラ 赤毛のアン・シリーズ 10 (新潮文庫)

名作「赤毛のアン」シリーズのラストとなる10作目は、ティーンエイジャーになったアンの末娘が主人公。
はじめてダンスパーティに参加して、淡い恋心を抱いていた男の子と踊って、さあこれから青春というときに第一次世界大戦が勃発し、日常が奪われていく…というストーリー。
出征している兵隊さんを思って食事やショッピングを自粛するシーンもあり、今読むとまたいろいろと考えさせられます。

読まなきゃ損!「赤毛のアン」シリーズ10作品

ところで赤毛のアンって、10作品もあるって知ってました?

1作目の「赤毛のアン」では、勉強を頑張ったアンが大学に合格するものの、マシューが突然亡くなってしまい、アンは進学を取りやめます。教員として働きながらマリラのそばで過ごすと決めて物語は終わります。
(このとき、ギルバートに家の近くの学校を譲ってもらったことをきっかけに、二人は仲直り)


赤毛のアン 赤毛のアン・シリーズ 1 (新潮文庫)

…ここまでが赤毛のアンだと思っていたら、大間違い。

その後の新人教師としてのアンを描いた「アンの青春」、お金を貯めて大学に進学して、仲良しの友人とシェアハウスをしながら学生生活を謳歌する「アンの愛情」

医学生のギルバートとは遠距離恋愛、教師の仕事では管理職として苦労する「アンの幸福」ラブラブな新婚生活を綴った「アンの夢の家」

幼い子供たちとの日々「炉辺荘のアン」子どもたちが成長していく「虹の谷のアン」戦争と末娘の恋を描いた「アンの娘リラ」

それに、「アンの友達」「アンをめぐる人々」の短編集2冊。

日本では長い間この10作品が赤毛のアンシリーズとされてきました(*)。
…海外では「虹の谷のアン」「アンの娘リラ」「アンの友達」「アンをめぐる人々」は、赤毛のアンシリーズにはカウントされていないそうです。でも図書館なんかでもずらっと並んでますし、シリーズということで!
*2009年に未邦訳だった「アンの想い出の日々」が出版されているので、11作品が正確なのかもしれません。

少女から女性、妻そして母になっても、ずっとそばにある本

赤毛のアンシリーズのなかで好きな本は?と聞かれたら、不思議なんですが、その時々で変わるんです。学生時代には「アンの青春」や「アンの愛情」を繰り返し読んだし、仕事がうまくいかなくて悩んだときは「アンの幸福」になぐさめられたし、はじめての子どもを妊娠・出産したころは、「アンの夢の家」ばかり読んだ記憶が。

気がつけばいつも人生に寄り添ってくれる、不思議な魅力のある本…それが私にとっての赤毛のアンシリーズ。

そして、実はロマンス小説としても、永久保存版!

アンとギルバートの恋以外にも、数えきれないくらいのロマンスがたくさん描かれているんです。男女のロマンス以外の愛憎劇も、実にいろいろ。語りつくせないくらいの人間模様。
だから、赤毛のアンを児童文学だと思っている人がいたら、もったいない。

大人だって読まなきゃ損だよ~。

ここからはロマンスを切り口に、赤毛のアンシリーズを徹底レビュー!!
(前置きが長いったら!)

えっ、こんなにロマンスてんこもり!?「赤毛のアン」が止まらない

忘れられた愛が再燃するまで

「アンの青春」…憧れの女性ミス・ヴァイオレットの恋物語

アンが森で道に迷って偶然たどり着いたのは、年齢不詳の美しい女性ミス・ヴァイオレットの家。

25年前に恋人とケンカ別れをして以来、引きこもって暮らしてきたというミス・ヴァイオレットは、オールドミスなのに、信じられないほどの美しさ。そして豊かな空想力の持ち主なんです。

アンは、ある日夢想家の教え子ポールを連れてミス・ヴァイオレットを訪ねます。一目で心を通じ合わせるポールとミス・ヴァイオレット。ふとした会話からミス・ヴァイオレットは、ポールが今も思い続けている古い恋人の息子だと知るのですが…。


アンの青春 赤毛のアン・シリーズ 2 (新潮文庫)

やがてポールに会いに、ミス・ヴァイオレットの長年の想い人がアヴォンリーへやってきます。25年ぶりの再会の行方はどうなる?

「大草原の小さな家」でも、主人公ローラの姉メアリーが教師として教え始めたとき、ほとんど少女という年で驚いたんですが、昔は16歳くらいになったら幼い子どもたちの教師として働いていたんですね。
だからまだまだ、少女らしさの残るかわいいアンが登場します。

ギルバートら友人たちと青年会みたいなものを立ち上げて、アヴォンリーのために奮闘したり、仕事の傍ら小説を書いて雑誌に投稿したり。マリラがやんちゃな双子の兄妹を引き取ることになり、そのお世話をしたり。そんな忙しい日々のなかで、あこがれの女性ミス・ヴァイオレットに出会って恋の橋渡しもつとめますよ~。

失ってはじめて気がつく、真実の愛

「アンの愛情」…待ち続ける男、ギルバートの苦悩

アンの妖精のような美しさが花開く1冊。でも、まだまだ心は少女のままのアンは、ギルバートの真摯な恋心を受け止めることができません。
ギルバートの告白を受ければせっかくの二人の友情が壊れてしまうと、はぐらかし続けます。

ところがそんなある日、少女のころにダイアナと語り合った空想の王子様そのものの男性がアンの前に登場、さすがのアンも恋に落ちるのです。

ハンサムでお金持ちのロイ・ガードナーの登場に、そっと身を引くギルバートが切ない。

ロイ・ガードナーと婚約も間近と噂されるアンは幸せいっぱいなはずなのに、ギルバートが最近ある女性と付き合っていると耳にして、心が乱れます…。


アンの愛情―赤毛のアン・シリーズ3―(新潮文庫)

こう書くとアンは結構、ギルバートを振り回していますね! でも、アンもそんな自分に傷つくんです。
大人の女性として1歩を踏み出すころの少女の、恋愛へのあこがれとおびえ、みたいなものが描かれていると思います。

気の合う女友達と一軒家を借りての大学生生活もわいわいがやがや描かれていて、月9のドラマみたいに楽しい1冊。…かも?

一方で少女時代のクラスメートで、ギルバートをめぐるライバルのような存在でもあったルビーという少女が病気で亡くなったりもします。また、アンがギルバートへの愛に気が付くシーンはギルバートの死と隣り合わせ。

楽しい日々の合間に、つらい出来事が急に訪れ、心が引きちぎられそうになる。それでも朝が来て、花が咲き、人は生きていく。
それを絶妙な筆加減で描いているのが、赤毛のアンの面白さなのかなあと思います。

ギルバートにずーっと愛され続けるアンですが、6人の子どもの子育てに追われる「炉辺荘のアン」では、”最近ギルバートは私にキスするときもうわの空だわ”なんて悩むシーンも登場します。倦怠期?←とても素敵なエピソードで、お気に入りです^^

ドラマチックな、これも一つの記憶喪失もの?

「アンの夢の家」…もうひとりの主人公は、囚われの人妻レスリー

結婚したアンとギルバートの新居の隣人は、美しい女性レスリー。少女のような見た目だけれど、海の事故で頭を怪我し子どものようになってしまった夫の面倒を見ながら農場を切り盛りしている苦労人の人妻です。

最初は幸せそうなアンを妬んだりもしたレスリーですが、やがて二人は友情をはぐくんでいきます。

ある夏、休暇を使って小説を執筆するために、オーウェンという男性がレスリーの家に下宿人としてやってきます。
彼はレスリーに一目惚れ。レスリーもオーウェンに惹かれるけれど、時代が時代。二人はお互いに気持ちを抑えたまま、夏が終わりオーウェンは去っていきます。

そんななか、レスリーの夫を診察したギルバートは、街で手術を受ければ回復するかもしれないと言い出すのです…。実はレスリーの夫は、元気だったころは身勝手なDV男でした。もしも手術が成功すれば、レスリーは今よりもっと不幸になってしまうというのに…。




アンの夢の家 赤毛のアン・シリーズ 6 (新潮文庫)

レスリーとアンの友情は、ダイアナとの友情とは違って微妙な距離感。なぜかというと、結婚して幸せいっぱいのアンと、結婚で不幸になったレスリー、二人の立ち位置が対局的だから。大人の女性あるある、じゃないですか?

立場の違うアンとレスリーは、お互いに好意を持っていながら、もう一歩近づくことができません。二人が心を通わせるきっかけが、とても切ない。
続刊「炉辺荘のアン」の中で「7人もお子さんがいらっしゃるとか?」という質問に「生きているのは6人だけなのよ」とアンがさらっと答えるシーンがあるんですが、最初の子との悲しい別れが、二人の女性を結びつける絆になります。

赤毛のアンって児童文学とは違うんだわ、と読んでいて素直に感じた1冊は、これだったかも。

戦時下の初恋は急ぎ足

「アンの娘リラ」…少女から女性への成長とともに

はじめてのダンスパーティで、あこがれの男の子だったケネスと踊ったリラ。ケネスは小さかったリラが美しい少女になったことに気が付きます。
けれどその夜は、第一次世界大戦前夜。やがてリラの兄たちとともに、ケネスも戦場へ行ってしまいます。
ケネスは出征の前にリラを訪ね、「戦争が終わるまで待っていてほしい」と言い残していくのですが…。


アンの娘リラ 赤毛のアン・シリーズ 10 (新潮文庫)

ケネスは、「アンの夢の家」に登場するレスリーとオーウェンの息子!父親似のイケメン&モテ男っぷりです

アンとギルバートは40代くらいでしょうか。成長した子どもたちを見守る存在として物語に登場します。
リラの3人の兄、ジェム、ウォルター、シャーリーが出征してしまい、寂しさと不安のなかで過ごす戦時下の暮らし、そして訪れる悲しい知らせ…。終戦。

このお話のエッセンスは、リラが引き取ることになる戦争孤児の赤ちゃん!
右も左もわからず子育てに奮闘するリラ、成長していく赤ちゃん、どちらも愛おしい♡

この本の冒頭では、末娘のリラは甘やかされたちょっとわがままなお嬢さん。ラストの終戦のころには愛情ゆたかな女性に成長します。でも「戦争があの子を早く大人にしてしまった」というアンの言葉が重たい。

(リラとケネスのロマンスではないんすが)ジェムと愛犬マンディの再会のシーンは、もう何回読んだかわからない。何度読んでも涙腺が崩壊してしまいます。

短編集も見逃せない

「アンの友達」…モンゴメリの筆力を感じる短編がぎっしり

ルシンダは35歳、いとこのロムニーと婚約中にケンカをして、そのまま15年もお互いに口をきいていません。頑固な二人はなにも語らないから、15年前の恋人たちのケンカの原因も、誰も知らないのです。でも、二人は今も婚約中のまま。
ある晩、一族の結婚式に居合わせた二人は偶然、夜道を一緒に帰ることになって…「ルシンダついに語る」

日曜学校で教える「わたし」は、ある家に雇われている男の子を学校に来させるよう説得するために、雇い主のアレキサンダー・エイブラハムを訪ねます。
女嫌いと評判の男に簡単に追い払われてなるものかと無理やり家に上がり込んだ「わたし」。実は男は天然痘の疑いで隔離されていたのです。気の合わない二人が一つの家に閉じ込められて、やがて「わたし」は発症した男を看病することに…「隔離された家」


アンの友達 赤毛のアン・シリーズ 4 (新潮文庫)

赤毛のアンがヒットして、続編を求められ続けたモンゴメリ。もうアンを書くことにうんざりしていたという話もあります。

「アンの友達」というタイトルながら、アンはほとんど登場しません。
失われた時間、すれ違う心、人と人をつなぐもの…男女のロマンス以外にも、いろんな愛の形があります。

短いページでまとめられた秀作たちに、作者の筆力を感じます。
赤毛のアンを読まずに、これだけ読んでも楽しめる短編集です。

「アンをめぐる人々」

一度も恋人を持ったことのないシャーロットは、女同士のお針の会でつい、過去の恋のエピソードをでっちあげて話してしまいます。バカにされたくない一心でついたささやかな嘘だったはずなのに、偶然街に同姓同名の男性が現れてシャーロットなんて知らないというからさあ大変…「偶然の一致」など


アンをめぐる人々 赤毛のアン・シリーズ 8 (新潮文庫)


実は短編集「アンをめぐる人々」は、「アンの友達」の編集段階でボツになったエピソードを出版社が勝手に編集して発行してしまったものだそうです。モンゴメリとは裁判にもなったそう。やや暗く重たいエピソードが多い気がしますが、それもまた味わいがあるといえばあります。
実生活では夫のうつ病に長年苦しんだというモンゴメリ。人生の苦悩を知っているからこそ、おとぎ話のようなエピソードにも読みごたえがあるのかもしれません。

赤毛のアン、いろんな出版社から出ているけれど…

翻訳者が違います

最近、本は電子書籍で読むことが増えているけれど、こばとの本だなにはボロボロになった赤い表紙の新潮文庫が。そう、うちにあるのは朝ドラ「花子とアン」でおなじみ、村岡花子さんの名訳のほう。情感があって私は好き。ただ、今読むと言葉遣いがやや古典の域かもしれません。

赤毛のアンって、いろんな出版社から出ています。それぞれ翻訳者が違います。新潮文庫版の村岡花子さんが有名ですが、電子書籍で復刊した神山妙子さんのバージョンは、アニメ版のもとにもなったらしい。
お好みで選べばいいと思うんです。

文春文庫からでている松本侑子さんの新しい訳も評判がよくて、気になっています。
いつか娘にも読んでほしいと思っていた赤毛のアンシリーズだけど、こちらのほうがすっと読めるのかしらと思っています。


赤毛のアン (文春文庫)

 

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赤毛のアン

世界名作劇場のアニメ「赤毛のアン」、覚えていますか?
あれで赤毛のアンに出会った人も多いのではないでしょうか。その台本のもとになったという神山妙子さんの翻訳バージョンが、電子書籍で復刊しています。

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