★★★★★
「帰らざる日々」
ルーシー・ゴードン
【あらすじ】
イタリアの由緒あるクラブから出演を依頼されて、ローマを訪れた歌手のジュリー。そこで、かつての恋人リコと再会する。
昔、ジュリーが駆け出しの歌手だったころ、クラブのバーテンダーとして働いていたリコ。一緒にいればお金がなくても幸せだった2人、やがて赤ちゃんを授かり、家族になろうとするけれど…。裕福だけれど冷酷なリコの祖父に脅され、ジュリーはリコとの別れを強要されてしまう。
そして今、祖父の後を継いで実業家となったリコは、ジュリーが自分を捨てたと思い込み、憎みながらも、子どもの行方を捜すために自分の経営するクラブに招いたのだった…。
【感想】
実はリコにそっくりな男の子を産んで、育ててきたジュリー。今もリコを愛しているけれど、自分を憎んでいるリコに子どもをとられてしまうのではと、息子の存在を告げることができない。
一方、ジュリーが歌手になるという夢をかなえるために、自分と別れて子どもを養子に出したと思い込んでいるリコ。ジュリーを憎みながらも、今も愛していることに気づき…。
しごく定番のシークレット・ベビーものなんですが、読み応えあって、私にとって「暇つぶしの娯楽」的な位置付けだったハーレクインの見方が大きく変わった1作でした。
息子のゲイリーに電話をしているところをみて、リコがジュリーにはイギリスに恋人がいると思い込むシーン。
リコが実の祖母のように慕っている女性が働いているレストランをジュリーが訪ねるシーン。
再会した2人がもう一度心を通わせていくドラマが、本当にステキ。
特にラストの2人の会話の中で、ジュリーが幸せならばそれでいい、と身を引こうとするリコのセリフが何度読んでもジーンときてしまうんです。
その男は、本当に君を愛してくれているのかい?
僕よりも、君を幸せにしてくれるのかい?
「愛してる」なんて言葉よりも、愛がにじみでていて…。
それに、リコがジュリーをローマ観光に連れ出すシーンでは、まるでローマを旅しているような気分も味わえちゃいます。
タイトル:帰らざる日々
作:ルーシー・ゴードン 訳:真咲理央
ハーレクイン・イマージュ I-1378
コミック版もおすすめ!
この作品との出会いは、荻丸雅子さんのコミック版でした。ちょっとクセのある絵柄の作家さんで、好き嫌いがわかれるようですが、実力派だと思います。少し古風なテイストの「帰らざる日々」のイメージぴったりでした。最近特典付の電子書籍版がリリースされているようで、気になります!